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2015年1月

1月 31 2015

判例集掲載のご紹介~その1~(判例時報2210号)

当事務所(弁護士稲垣篤史及び弁護士秋元隆弘)が担当し,地方自治体を提訴して勝訴した事件が,判例時報2210号(平成26年3月21日号)P.36に掲載されておりますので,ご紹介いたします。

 

1 事件の表示

議員除名処分取消等請求控訴事件

名古屋高等裁判所平成25年(行コ)18号

平成25年7月4日判決

 

2 判示内容

本件は,愛知県美浜町議会議員であった者(当事務所の依頼者)が,議会から議員除名処分を下されたことから,美浜町を相手方として,除名処分の取消し,国賠法に基づく慰謝料及び謝罪広告の掲載,未払議員報酬の支払,受領済議員報酬の返還債務不存在を求めた事案である。原審(名古屋地方裁判所)が請求の全部を棄却したことから,控訴した。控訴審は,原判決を変更し,除名処分について,議会運営委員会の「議員に対する本会議での謝罪等」の決定は違法な決定であり,陳謝処分に従わず,陳謝文の朗読を行わなかったという懲罰事由での除名処分は,社会観念上著しく妥当性を欠くとし,除名処分を取り消し,未払議員報酬の支払を認容し,受領済議員報酬の返還債務不存在を確認した。

 

3 判決後の経過

町は最高裁判所に上告したが,平成26年9月5日,上告棄却により,確定。

 

4 コメント

地方議会の内部自治については,基本的には,議会の自律的判断に委ねられるものですが,その裁量を踏み越えた権利の濫用がある場合,違法となります。本件の場合,依頼者である議員は,議会において権力者の疑惑を追及しようとして質疑したところ,その内容が問題視され,これに端を発し,最終的に,議会の多数決(全会一致)により,議員を除名されるに至っております。しかし,議会においては,表現の自由は最大限に保障される必要があるのであって,この観点から見た場合でも,本件の名古屋高等裁判所の判決は,当然の結論であると考えます。

 

司法プロセスを経ることにより,多数決原理では危殆に瀕していた依頼者の権利・利益を擁護することができ,「法の支配」の実現に,微力ながら協力できたものと考えております。

 

(文責:弁護士稲垣篤史)

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