判例集掲載のご紹介(判例時報2210号)

当事務所(弁護士稲垣篤史)が担当し、地方自治体を提訴して勝訴した事件が、判例時報2210号(平成26年3月21日号)P.36に掲載されておりますので、ご紹介いたします。

1 事件の表示

議員除名処分取消等請求控訴事件

名古屋高等裁判所平成25年(行コ)18号

平成25年7月4日判決

2 判示内容

本件は、愛知県美浜町議会議員であった者(当事務所の依頼者)が、議会から議員除名処分を下されたことから、美浜町を相手方として、除名処分の取消し、国賠法に基づく慰謝料及び謝罪広告の掲載、未払議員報酬の支払、受領済議員報酬の返還債務不存在を求めた事案である。原審(名古屋地方裁判所)が請求の全部を棄却したことから、控訴した。控訴審は、原判決を変更し、除名処分について、議会運営委員会の「議員に対する本会議での謝罪等」の決定は違法な決定であり、陳謝処分に従わず、陳謝文の朗読を行わなかったという懲罰事由での除名処分は、社会観念上著しく妥当性を欠くとし、除名処分を取り消し、未払議員報酬の支払を認容し、受領済議員報酬の返還債務不存在を確認した。

3 判決後の経過

町は最高裁判所に上告したが、平成26年9月5日、上告棄却により、確定。

4 コメント

地方議会の内部自治については、基本的には、議会の自律的判断に委ねられるものですが、その裁量を踏み越えた権利の濫用がある場合、違法となります。本件の場合、依頼者である議員は、議会において権力者の疑惑を追及しようとして質疑したところ、その内容が問題視され、これに端を発し、最終的に、議会の多数決(全会一致)により、議員を除名されるに至っております。しかし、議会においては、表現の自由は最大限に保障される必要があるのであって、この観点から見た場合でも、本件の名古屋高等裁判所の判決は、当然の結論であると考えます。

 

司法プロセスを経ることにより、多数決原理では危殆に瀕していた依頼者の権利・利益を擁護することができ、「法の支配」の実現に、微力ながら協力できたものと考えております。

 

(文責:弁護士稲垣篤史)

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