投稿日:2019.08.07
判例集掲載のご紹介(判例時報2409号)
当事務所(弁護士稲垣篤史)が担当して勝訴した事件が、判例時報2409号(2019年8月1日号)P.54に掲載されておりますので、ご紹介します。
1 事件の表示
原状回復等請求控訴事件
名古屋高等裁判所平成29年(ネ)335号
平成30年5月30日判決
2 判示内容
本件は、住宅販売業者から新築の建売住宅を購入した者(当事務所の依頼者)が、住宅販売業者を提訴し、勝訴判決(約1億円の支払命令)を得たものである。当該住宅は、条例(風致地区内建築等規制条例)の定める緑化率を満たしておらず、条例違反の状態にあったにもかかわらず、住宅販売業者はこれを秘して売却した。そこで、購入者において、住宅販売業者を相手取り、売買契約の錯誤無効、詐欺取消し、消費者契約法4条2項に基づく取消し、瑕疵担保責任に基づく解除を主張し、売買代金の返還等を求めた事案である。第一審(名古屋地方裁判所)は請求を棄却したことから、当事務所において控訴審(名古屋高等裁判所)から担当した。控訴審においては、追加の主張・立証も踏まえて、詳細な事実認定をなしたうえで、住宅販売業者は条例違反の事実を認識しており、かつ、購入希望の消費者が条例違反の事実を認識していないことを知りながら、条例違反の事実を告げなかったものと推認するのが相当であると認定した。そのうえで、消費者契約法4条2項に基づく取消しを認め、住宅販売業者に対し、売買代金等合計約1億円の返還を命じたものである。
3 判決後の経過
住宅販売業者により最高裁判所に上告・上告受理申立てがなされたが、上告棄却・不受理となり、控訴審判決が確定した。その後、確定した判決をもとに、認容額の全額を回収した。
4 コメント
本件は、第一審と控訴審で結論が分かれておりますが、法律論というより、事実認定が大きな争点となったものです。控訴審では、住宅という購入対象物の特質、緑化率の意味合い等をアピールした結果、新築の建売住宅という高額な取引であり担保設定もなされた取引でしたが、消費者契約法4条2項により取消しを認めてもらうことができました。高額な取引だから法的安定性を重視して取消しを否定するのではなく、むしろ、高額な取引ゆえの特質を踏まえ、具体的に妥当な結論を導いた判決と評価できると考えます。
(文責:弁護士稲垣篤史)