投稿日:2009.06.15
裁判員制度
すでに平成16年5月21日に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立していたのですが、ついに平成21年5月21日から、裁判員制度が始まりました。裁判員制度とは、簡単に言うと、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを、裁判官と一緒に決める制度です。国民が刑事裁判に参加することにより、裁判を身近で分かりやすいものとし、司法に対する国民の信頼を向上させることを目的として制度化されたものです。
このように市民が裁判に参加する制度は、形の違いはありますが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア等欧米諸国でも採用されています。しかし、「大岡越前」や「遠山の金さん」といったような人気時代劇があることからも分かるように、我が国では、昔から「おかみ」から権威ある判断を受けるというシステムに慣れてしまっており、また、司法に対する信頼は他の国と比較しても高いものがあると思います。このような我が国において、市民参加型の刑事司法制度が本当に根付くかは、私個人としては疑問を感じる部分もないではないですが、裁判員制度が制度化された趣旨を尊重し、時間をかけて徐々に浸透させて行き、運用も適宜改善して行くのであれば、我が国に合った独自の市民参加型司法制度が実現できるのではないかと思います。
以下、簡単ではありますが、裁判員制度の概要を説明します。
1.裁判員制度の対象事件
裁判員制度は、どのような刑事事件でも対象となるわけではなく、一定の重大な事件に限定されております(例:殺人、強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死、現住建造物等放火、身の代金目的誘拐、保護責任者遺棄致死)。
2.裁判員の選ばれ方
(1) 前年の秋頃~裁判員候補者名簿の作成
各地方裁判所ごとに、管内の市町村の選挙管理委員会がくじで選んで作成した名簿に基づき、翌年の裁判員候補者名簿が作成されます。
(2) 前年11月頃~候補者への通知
裁判員候補者名簿に記載されたことが通知されます。この段階ではすぐに裁判所へ行く必要はありません。また、就職禁止事由や客観的な辞退事由に該当しているかどうかなどをたずねる調査票が送付されます。調査票を返送し、明らかに裁判員になることができない人や、1年を通じて辞退事由が認められる人は、裁判所に呼ばれることはありません。
(3) 候補者の選考
事件ごとに裁判員候補者名簿の中から、くじで裁判員候補者が選ばれます。
(4) 原則として裁判の6週間前まで~呼出状の送付
くじで選ばれた裁判員候補者に質問票を同封した選任手続期日の知らせ(呼出状)が送られます。裁判の日数が3日以内の事件(裁判員裁判対象事件の約7割)では、1事件あたり50人程度の裁判員候補者に知らせ(呼出状)が送られる予定です。質問票を返送し、辞退が認められる場合には、呼出しが取り消されますので、裁判所へ行く必要はありません。
(5) 裁判の当日~選任手続期日
裁判員候補者のうち、辞退を希望しなかったり、質問票の記載のみからでは辞退が認められなかった人は、選任手続の当日、裁判所へ行くことになります。候補者は、裁判長から、不公平な裁判をするおそれの有無、辞退希望の有無・理由などについて質問をされます。候補者のプライバシーを保護するため、この手続は非公開となっています。
(6) 6人の裁判員を選任
最終的に事件ごとに裁判員6人が選ばれます(必要な場合は補充裁判員も選任されます。)。通常であれば午前中に選任手続は終了し、午後から審理が始まることになります。
3.裁判員の仕事
裁判員に選ばれたら、次のような仕事をすることになります。
(1) 公判への立会い
裁判員に選ばれたら、裁判官と一緒に、刑事事件の法廷(公判)に立ち会い、判決まで関与することになります。公判は、連続して開かれます。公判では、証拠書類を取り調べるほか、証人や被告人に対する質問が行われます。裁判員から、証人等に質問することもできます。
(2) 評議・評決
証拠を全て調べたら、今度は、事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑にするべきかを、裁判官と一緒に議論し(評議)、決定する(評決)ことになります。評議を尽くしても、意見の全員一致が得られなかったとき、評決は、多数決により行われます。ただし、裁判員だけによる意見では、被告人に不利な判断(被告人が有罪か無罪かの評決の場面では、有罪の判断)をすることはできず、裁判官1人以上が多数意見に賛成していることが必要です。有罪か無罪か、有罪の場合の刑に関する裁判員の意見は、裁判官と同じ重みを持ちます。
(3) 判決宣告
評決内容が決まると、法廷で裁判長が判決を宣告することになります。裁判員としての役割は、判決の宣告により終了することになります。
以上が裁判員制度の概要です。この制度の趣旨を実現するためには、国民自身が主体的に制度内容について理解し、積極的に参加し、制度に改善すべき点があれば指摘して改善していくことが必要であると思います。